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世界初の発見 捕食魚のエラの隙間からウナギの稚魚が脱出

捕食魚のエラの隙間からウナギの稚魚が脱出図1. ニホンウナギの稚魚がドンコのエラの隙間から抜け出す様子

水産?環境科学総合研究科の長谷川悠波(博士前期課程、実験当時:水産学部 4 年)と河端雄毅(准教授)は、国立研究開発法人 水産研究?教育機構の横内一樹(主任研究員)と共同で、ニホンウナギの
稚魚が捕食魚に捕獲されても、エラの隙間を通って口外に脱出することを発見しました (図 1) 。

 

ポイント
? 絶滅危惧種であるニホンウナギの捕食回避行動を明らかにした世界初の論文。
? 捕食者に捕獲された後の能動的な行動であり、魚類以外の分類群を含めても珍しい行動。
? ニョロニョロとした 細長い形の進化を理解することに繋 がる可能性。

【発見の経緯と意義】

ニホンウナギは重要な水産資源ですが、絶滅危惧種に指定されるなど、その資源量は著しく減少しています。しかし、資源の維持、回復のために重要であるにも関わらず、ニホンウナギの捕食回避行動を直接調べた研究はありませんでした。そこで、本研究グループは、2020 年度より河川に多く生息する捕
食者であるドンコとニホンウナギの稚魚を同じ水槽に入れて、その攻防を観察する研究を開始しました。
実験当初は、ニホンウナギが捕食者の攻撃をかわす瞬間か食べられる瞬間を高速度カメラで撮影していました。しかし、実験を担当していた長谷川が、捕食者に食べられたはずのニホンウナギが水槽内で泳いでいることを発見 。「何らかの方法により捕食者の口内から抜け出しているかもしれない」と考え、長時間の撮影ができる通常のカメラに切り替えて観察を行いました。その結果、ニホンウナギが捕食者に捕獲されても、半数以上( 54 匹中 28 匹 ; 51.9%)がエラの隙間から抜け出していたことが分かりました。
この研究成果は、主に 3つの点で意義があります。

1つ目は、その行動自体の面白さです。捕食者に捕獲された後に生き残ることができる生物は多数存在します。しかし、そのほとんどは硬い殻によって消化されずに排泄されるといった受動的なものです。一方で、今回ニホンウナギで見られた行動は、能動的に捕食者のエラの隙間から脱出するというもので、無脊椎動物など魚類以外の分類群を含めても非常に珍しい行動と言えます。また、抜け出した28匹全てが尾部から抜け出すという興味深い特徴もありました。これは、ウナギ が後ろ向きに遊泳するのが得意なことと関係しているかもしれません。

2つ目は、ニョロニョロとした細長い形の進化を理解することに繋がる可能性があることです。細長い形は、ウナギ?アナゴなどのウナギ科だけでなく、ハゼ科やナマズ科など様々な系統で独立に進化しています。しかし、その形にどのような生き残りや繁殖のメリットがあるのかについては、狭い隙間の利用と穴掘り行動の促進が仮説として挙げられているにすぎません。
今後、今回の研究の幅を広げ、様々な系統の細長い種を捕食者に食べさせる実験を行うことで、「捕食者の口内からの脱出」が細長い形の進化を促進したという仮説を検証できる可能性があります。

3つ目は、ニホンウナギの資源回復に役立つ可能性があることです。現在、ニホンウナギの資源回復策のひとつとして全国的に飼育魚の放流が行われています。しかし、大型の放流魚の多くに成長が悪く、性比がオスに偏るという問題があることから、近年、より小型の個体を放流することが推奨され始めました。一般的に、小型の個体は捕食者を回避する能力が低く、多くの場合は放流水域に生息する捕食者に捕食されます。そのため、本研究の成果はどんなウナギを放流すると生き残り易く、高い放流効果が得られるかを考えるのに役立つと考えています。
なお、本研究成果は、アメリカ生態学会によって刊行されてい る「 Ecology(IF=5.499)」に掲載されました。

論文情報

雑誌名:Ecology
論文名:Escaping via the predator’s gill: A defensive tactic of juvenile eels after capture
    by predatory fish
執筆者名:長谷川悠波?横内一樹?河端雄毅
掲載日:2021年12月18日
URL:https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecy.3612
DOI:https://doi.org/10.1002/ecy.3612